2004年06月09日

COEテーマ講義「心とことば」(7)丹野義彦さん

COEテーマ講義(7)丹野義彦さん
■COEテーマ講義「心とことば」(7)丹野義彦さん

月曜日はCOEテーマ講義の第7回,
東京大学 総合文化研究科 広域科学専攻,認知行動科学が専門の,丹野義彦さん。

実は今学期,丹野さんの「現代教育論」という講義をとっているので,
講義とかぶる範囲もあったのだが,
自分の病気─うつ病もテーマだったので,興味深く聞くことができた。

以下,内容報告。

今回の講義の内容は

(1)不安障害
(2)抑うつ
(3)統合失調症

の3つの精神病理に関して,

1.多くの人におこりうるものであり,症状には段階(階層性)がある
2.症状には環境適応的な面と,不適応的な面,両面がある
3.1,2に基づいた治療モデル

の3つについてお話しいただく,という内容。


2はまさに,以前の記事(3/22「【本】人はどうして死にたがるのか」)でぼくが紹介した,「精神病の進化心理学的解釈」そのもので,
「おぉ〜,けっこうこういう考えは広まってきているんだ!」とうれしく思った。


たとえば「パニック症状」(過呼吸,心拍数の増加など)を例にして説明すると,

・窒息状況では適応的な反応である(だって,息ができなければ死んでしまう)

・しかし,それが日常場面でなんらか誤警報により暴走すると,生活妨害的(不適応的)になってしまう。

→したがって,発作が起こるメカニズムを消去してしまっては困る。
 誤作動を予防するよう,「認知」を適切化してあげることが重要

というふうになる。


同じように,たとえば高所恐怖では,

・高所恐怖のない人間は生き延びられない(飛び下りて死んでしまう)
したがって,高所恐怖そのものは,適応的な反応である。

・しかし,それが過剰に発動し,コントロール不能なレベルに至ると,
社会生活を営む上で困ってしまう(不適応的になってしまう)

→したがって,これも同様に,「認知」の適切化が重要


といった具合である。

このように精神病理(の多く)は,
「本来,生存にとって不可欠な,適応的な反応が,なんらかの誤作動によって過剰に発動すること」によっておこる,
というわけである。

これは,(ぼくとしては)非常に納得がいく。

「納得がいく」ということは重要であると思う。

「なぜ病気になるのか」がわかれば,「どう対応したらいいか」につながるからである。

フロイトの精神分析のような,いまいち根拠の感じられない説明よりも,
こういう「適応・不適応」という観点での説明の方が遥かに説得力がある,
とぼくは思うのだが,どうだろうか。



【参考サイト・書籍】

東京大学大学院 総合文化研究科? 認知行動科学 丹野研究室

東京大学研究者データベース:丹野義彦

本も書いておられる。
アマゾンのレビューを見た限りでは,けっこう良書のようである。


エビデンス臨床心理学─認知行動理論の最前線

また,レビューに以下のような記述があった。

日本では心理学というと「ユング・フロイト」などが有名だが
海外では既に歴史の産物であり
現代の最新の療法ではない(治療効果がない)ことも、
本書を通じて学ぶことができる。

そうか,やはりユング,フロイトはもう棄却されているのか。
しかし,「海外では」というところが引っ掛かる。日本ではまだしぶとく生きている?


【他の回の記事はこちらから↓】
http://blog.livedoor.jp/gandhi/archives/cat_48505.html

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この記事へのコメント
はじめまして。私は今年東大に入学した者です。私も丹野先生の現代教育論取ってます。
興味深いですよね。毎回とっても楽しみにしているんです。でも
ガンジーさんと同じ講義を取っているとは!
Posted by きょきょ at 2004年06月09日 19:55
きょきょさん,初めまして。こんにちわ。

>でも ガンジーさんと同じ講義を取っているとは!

おぉ,こちらこそ「この教室の中にぼくのblogを読んでくれている人がいるのか」なんて考えると,
なんだかドキドキします。会ってみたいような,会わずにいたいような…(^^;)

でもやっぱり会ってみたいかなぁ。
もしよければ,メールなどくださいませ。
(あ,もちろん,無理にとは申しません。もしよければ,です)
Posted by ガンジー at 2004年06月09日 23:03
丹野先生は、私の指導教授の知り合いです。
うう…丹野先生の講義が聴けるなんて、うらやましいです…。

Posted by Sana at 2004年06月09日 23:43
この講義は、「心とことば」の講義で初めて休んでしまった回でした。
非常に悔しいです。
39度を突破する風邪を、先週ずっと引いていたもので…。
講義内容ここに書いて頂けて助かっちゃいました。
Posted by Yuki at 2004年06月13日 02:33
Sanaさん,コメントありがとうございます。

>丹野先生は、私の指導教授の知り合いです。

そうなんですか!う〜ん意外なつながりです。


Yukiさん,はじめまして。
お役に立てたようで,うれしいです。
きょきょさんといい,Yukiさんといい,東大生も意外とこのblogを見てくださっているんですねぇ。
Posted by ガンジー at 2004年06月13日 14:43