2004年06月03日

生命科学の現在・パート6(9)久保健雄さん

生命科学の現在・パート6(9)久保健雄さん
■生命科学の現在・パート6(9)久保健雄さん


 「生命科学の現在・パート6」第9回,今回の講師は,東京大学理学部生物学科,久保健雄さん。
 久保さんのお話を聞くのは昨年に続いて2回目だったのだが,
幸い?(^^;)去年のお話の内容はかなり忘れていたこともあり,新鮮に話を聞くことができた。
とても刺激的なお話で,たのしかった!
●1.純粋科学と応用科学

 久保さんはもともとは薬学部のご出身で,3年前に理学部に移ってこられた,という経歴をお持ちだそうである。
そこで,薬学部(=薬の開発を通して人の健康福祉への貢献を目指す「応用科学」)と
理学部(=自然界の原理・原則を研究する「純粋科学」)の違いについて話してくださった。

 曰く,「役に立つかどうかの違いは,あまり関係ない。
基礎研究も,遠い将来には役に立つ可能性がある。
自分としては,基礎も応用も〈役に立つまでの時間が違うだけ〉のように感じる。
それよりも大切なのは,基礎・応用の区別なく,〈質の高い研究〉を目指す事だと思う」
とのこと。

 う〜む,なるほど。確かに農学部の正木さんのお話を聞いたときも,応用とか基礎とかあまり関係ない話だったなぁ。


●2.ミツバチの利他的行動

 続いて本題,今ご自身が研究されている「ミツバチの社会性」についてのお話。

 ミツバチのコロニー(社会)は女王蜂を中心にカースト化されていて,
たとえば働き蜂は巣を襲うスズメバチを自分の命を捨てて攻撃する,という習性を持っている。
この自分を犠牲にする行動(=利他的行動)はどのような遺伝子によって発現するのか。

 久保さんらはそれを調べるために,働き蜂の中に特に攻撃性の高い蜂がいることに着目し,その蜂で特異的に発現している遺伝子を調べたそうである。

 そして,「Kakugo」(覚悟)というRNAを見つけた。
 よく調べてみると,このKakugoRNAがコードするタンパク質は,ピコルナ様ウイルスというウイルスが作るタンパク質に似ていた。
 一方,KakugoRNAに対応する塩基配列はミツバチゲノムからは発見されなかった。

 つまり,ミツバチの攻撃性はウイルス感染によって増大している,ということがわかったのである!
これはオドロキである。とてもおもしろい事実だ。

 詳しい話は省略して,
今後の課題として,「ウイルスの感染ルートは?」「どのような機構で攻撃行動を誘引するのか」「ほかの種類の蜂では感染は見られるのか」などを挙げられていた。
う〜ん,Interesting。考えてるだけでワクワクしてくるなぁ(^^)。


●3.ミツバチの脳

 本題2。今度はミツバチの脳みそのお話。

 まず,ミツバチの脳で特異的に発現している遺伝子を探す。
すると,ミツバチの記憶・学習・感覚統合に関係している「キノコ体」という部位から,「Mblk-1」という遺伝子がえられた。

 そのMblk-1の線虫でのホモログ「mbr-1」でGFP(蛍光タンパク質)を用いてラベルして実験したところ,
mbr-1は神経系で特異的に発現し,mbr-1が欠損した個体の脳では神経の連絡に異常が起こることを確認した,…などなど。

 あともうひとつ,「光刺激─口吻伸展反射連合系学習」というお話もしていただいたのだが,うまくまとめられないや。
こちらはまだ遺伝子的な裏付けなどはまだのよう。でも現象としてはおもしろかった。


●研究室見学

 お話の後は,恒例の研究室見学。いくつかの部屋を見せていただいた。

 院生の方が,「KakugoRNAを取り出すために蜂の脳みそをとる」という作業をされていたので,それも見せていただいた。おもしろかった!

 もう夜だったのと,防護服を付けないと危ないとのことで,
屋上で飼育中のミツバチたちは見れなかったのだけが,ちょびっと残念だった。


●飲め!食え!語れ!

生命科学の現在・パート6(9)パーティ

 研究室見学の後は,先ほどの教室に戻って,買い出しに行き,簡単なパーティ。
もちろん,酵母菌のオシッコも少々(^^;)。

 各自自己紹介をしたり,お酒が入った松田先生が現在の大学の教育システムの問題について
(時折こてこてのオヤジギャグを交えながら^^;)熱く語り出すなど,と〜ってもたのしいパーティだった。

 結局うたげが終わったのは,夜10時近くであった。最後に,みんなで記念撮影をした。

生命科学の現在・パート6(9)記念写真

 以上,今回は,特にたのしかった!!

実は2度目だから今回はパスしようかな,と思っていたのだが,本当に行って良かった。満足,満足〜。


【参考サイト】

東京大学研究者データベース:久保健雄

東京大学大学院 理学系研究科 生物科学専攻 細胞生理化学研究室


【関連blog記事】

Wonderful Miyashita's House: ミツバチが「覚悟完了」

或る荒川区民のつぶやき:スズメバチ攻撃のミツバチに「覚悟」遺伝子


【他の回の記事はこちらから↓】
http://blog.livedoor.jp/gandhi/archives/cat_45939.html

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