2004年05月20日

生命科学の現在・パート6(7)武田伸一さん

生命科学の現在・パート6(7)武田伸一さん
■生命科学の現在・パート6(7)武田伸一さん

 「生命科学の現在・パート6」第7回,今回の講師は,国立精神・神経センター研究所,武田伸一さん。
ちょうどいま働き盛りな感じの,強いエネルギーと信念を感じさせる人だった。
 雨の中,はるばる小平(東京の郊外)まで行った価値はあったと思う。

以下,内容報告です。



●医師から研究の道へ

 武田さんはもともと医学部を卒業されて医師になられて,医師として働かれる中で,デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者さんと出会い,
「それをなんとか治したい」ということで研究の道に入られ,
フランスのパスツール研究所に留学,5年間の留学生活の後,帰国して現在に至る,という経歴をお持ちで,
質問などの受け答えの際の誠実・明瞭さは,やはり「昔とった杵柄」というのか,医師の時代の経験が生きているのかなぁ,なんてことを感じた。


●デュシェンヌ型筋ジストロフィー

 というのは,筋肉の壊れていく病気で,
発病すると歩行障害が出て,11歳以前に歩けなくなり,車イス生活,やがては寝たきりとなり,
最後は呼吸障害で20歳以前に80%以上が死亡する,という難病だそうである。

 武田さんはこの病気の治療の研究に取り組んでおられ,遺伝子治療,幹細胞による治療,などいくつかのアプローチを試みられている,とのこと。
 今回はそのうちの遺伝子治療にしぼって,お話をしていただいた。


●遺伝子治療

 筋ジストロフィーの原因遺伝子は1987年につきとめられていて,
「ジストロフィン」という分子を合成する「DMD」という遺伝子がそれだそうである。
筋ジストロフィーは,この遺伝子になんらかの異常(欠損など)があって起こる,というわけである。

 これに対して,武田さんらは遺伝子治療─つまり欠損しているDMD遺伝子を筋肉に注射する,という治療法を研究されている。

 ただそれにはいろいろ技術的な問題があって,たとえば遺伝子を注入する際のベクター(AAVというウイルスを使う)にはジストロフィン遺伝子は大き過ぎてうまく積むことができない。
そこでうまく挿入することのできる「マイクロジストロフィン」という分子をデザインする研究。

 あるいはAAVベクターを注入するとどうしても免疫反応が出て拒絶されてしまう,という問題に対して,免疫をうまく抑制するような研究。

 これらの研究を,武田さんらはマウスとイヌを使って研究されているそうである。
 ヒトへの応用は,さすがにまだ先のことになるが,それでもそう遠くない未来に,トライアルが始まる,とのことだった。

生命科学の現在・パート6(7)筋ジストロフィー犬

(写真はポスター発表用のポスター。筋ジストロフィーのイヌが写っている。少しわかりにくかもしれないが,関節の拘縮,脊椎の変形などが認められる。)


●研究室見学

 お話の後は,恒例の研究施設見学。
3つのグループに分かれて引率していただいた。
ぼくのいたグループは,「動物実験施設」という実際にマウスやイヌを飼育している建物へ。

 雨の降りしきる中,広い敷地内をみんなでわさわさと移動。途中,大きな水たまりなどに行く手を阻まれたりしながら,やっとこさ建物に到着。

 ここは館内撮影禁止であった。
(やはりイヌなどを使っていると動物愛護団体からクレームがつくから,なのだろうか?
でも学会発表はするからバレるはずですよねぇ…どうなんだろう?)

 細胞を分離する「セルソーター」という装置や,細胞の切片を切り出す作業の様子,切り出した切片の顕微鏡図,などを見せていただいた。
 夜8時を回っていたと思うが,大勢の人が残っておられ,研究にいそしんでおられた。お疲れさまです。

そんなわけで,

 以上,今回もたのしかった!!

武田さんはじめ研究所のみなさん,お世話になりました。ありがとうございました。


●おまけ:吉祥寺で夕食

 帰りは吉祥寺で降りて,みんな(といっての残ったのは10名くらいだったかな)でラーメンをすすった。
熱々のラーメンは,雨で小寒い日にとてもおいしかった。おしゃべりも楽しかったし。
 「おなかいっぱい,満足満足」で帰宅したのだった。来週も楽しみだ〜。


【参考】

国立精神・神経センター神経研究所

共同通信社MEDICAL NEWS「寿命延び、治療法もう一歩 筋ジストロフィー」


【他の回の記事はこちらから↓】
http://blog.livedoor.jp/gandhi/archives/cat_45939.html

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この記事へのコメント
理系で難しい話題ですが、コメントに挑戦してみます。

「筋ジストロフィー」の原因となる遺伝子は、既に解明されているのですね。
先ほど、「日本筋ジストロフィー協会」のHPをざっと読みました。
この記事に登場する武田 伸一先生のお名前も、HPに出ていました。
生命に関わる病気という、私がまだ預かり知らない世界を教えていただきました。

(長文なので、分けますね)
Posted by Sting at 2005年06月10日 22:47
(続きです)

自閉症の場合は、原因がはっきりしていません。
わかっていることは、妊娠・出産・新生児期に子どもの脳になんらかの問題が起こったためらしいということや、遺伝的な要因もあるらしい…と「らしい」「らしい」だらけですね。
自閉症の根本的な治療法は、まだ見つかっていません。
また、直接生命の危機と結びついていない障碍です。
そのため、一般的な自閉症児者の家族は、
「自閉症自体を治したい」という意識ではなく、
本人が混乱せず、日々の生活をしやすくすること」
「社会と折り合いをつけて生きること」
などを療育の目標と考えています(あくまで、一般的な話です)。
Posted by Sting at 2005年06月10日 22:49
(これで最後です)

しかし、悲痛な思いで
「なんとしても、自閉症を治したい!」
と考える方もおられます。
私も
「いつまでも原因が解明されないのはもやもやして嫌だな。」
という思いはあります。
だから、せめて、原因だけは解明されてほしいという気持ちです。
自閉症に生まれたこと自体は、結構気に入っています。
いろいろめんどくさいですけどね。
Posted by Sting at 2005年06月10日 22:49
>Stingさん

コメント,修正しておきました。
自閉症の原因がわかっていないことについては,
以前,カイパパさんの講演で教えてもらいました。
でも最近は,
「MRI(磁気共鳴装置)」や「光トポグラフィー」といった,
種々の技術も開発されてきています。
いつか,解明される日が来ると思います。
Posted by ガンジー at 2005年06月11日 22:25
ガンジーさんへ。
コメント修正、どうもありがとうございました。

全然関係ないけど…
今日、ひとりで郊外を散歩しました。
水が流れ、緑に満ちて、とても静かでした。

昨日ある会議に出席し、
人がいっぱいいる中で私なりに頑張ったご褒美のつもりです。

Posted by Sting at 2005年06月13日 18:15
>Stingさん

そうですね,ご褒美や息抜きも,大切ですね。
これでも,以前よりは,
自分を甘やかすのも少しは上手になりました(^^ゞ
Posted by ガンジー at 2005年06月14日 10:30