2005年07月26日

黒き影との闘い 第一章 第一節

■黒き影との闘い 第一章 第一節

ガチャリ。カサカサカサ……

帰宅した民夫の視界の隅で,黒い影が動いた気がした。
風呂場の方へ消えたようだ。

「ん?気のせいかな……」

そう思いつつも,
民夫は影の逃げ込んだ方向へ,ちらりと視線を投げ掛けた。

いる。間違いない。
奴だ。
一瞬,たじろぐ。
しかし,折れそうになる心を,民夫はすぐに立て直した。

チャンスなのである。
風呂場は,閉鎖空間だ。逃げられる可能性は,低い。

「やるか」

一戦交える覚悟を決め,
古新聞を手に取ると,民夫はそろりそろりと,
影に向かって接近した。

風呂とトイレが一緒になっている立方空間の,
右下手前の角に,奴はいた。

長い触覚をひらひらさせながら,辺りをうかがっている。
ふと,こいつがこのサイズで,本当によかったと,民夫は思う。
悪い癖が出た。いつもの妄想癖だ。

「もしこいつが自分と同じサイズで,
 戦車くらいの大きさがあったら……」

おぞましい考えが,脳裏をよぎる。
きっと,マゾなのだろう。

いかんいかん,こんなことを考えてる場合ではない。
いまは,目の前の敵を倒すことだけに集中しなければ。

冷静に状況を分析する。
手持ちの武器は,新聞紙だけだ。
「きんちょうる」などという野蛮な武器は,
民夫の美学には反する。だから使わない。家にも置いてない。
(「ばるさん」なんていう大量破壊毒ガス兵器は,
もってのほかである。あれは確実に,自分の体にも悪い)

したがって,作戦は,至ってシンプルである。
新聞紙を上から被せ,廻りから囲い込み,捕獲する。

部屋の中でこれをやると,
家具などが障害にになって,たいてい逃げられてしまう。

しかし,今日はいささか状況が違う。
風呂場に逃げ込んだのが,おまえの運の尽きだ。

細心の注意を払いながら,対象に接近する。

50センチ,

30センチ,

20センチ…………

じりじり……
相手が動く気配は,ない。

しかし,油断はできない。
奴らには,「飛翔」という,最終兵器があるからである。
追い詰められると,奴らはその最終兵器を発動する。

その威力は,すさまじい。
心拍数の異常上昇という速攻効果だけで,心臓の弱いものは死に至るし,
遅効・持続的幻覚作用もある。
部屋の中の黒い物体が,全て,「黒い影」に見えてしまうようになるのである。
最低数日間はこの症状が続くし,
下手をすれば,その後何年も,後遺症に苦しまされることもある。

民夫も,そのひとりだ。
小学校4年生の時の苦い記憶のフラッシュバックを必死に振り払いながら,
それでも,我慢強く対象との距離を縮めていく。

キミハモウカンゼンニホウイサレテイル……
ダカラオネガイ,オトナシクツカマッテネ……

10センチまで近付いた所で,
一気に新聞紙をかぶせこむ。

でやっ!


捕らえた!
……ようである。逃げられた形跡はない。
しかし,中身を確認する術はない。もちろん,その勇気も。

そう思った瞬間……!

(つづく)

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この記事へのコメント
そう思った瞬間……!

…奴が新聞を突き破った?!

…ぬわーん! 続くですか?!
気になります〜

ちなみに北海道には「やつ」はいなんいんです(^^;)
平和です〜
Posted by 編集人 at 2005年07月26日 17:56
出た! イニシャルGだ! ホームステイだ!(←羽海野チカ『ハチミツとクローバー』参照)
さっき近所の弁当屋で見かけました。イヤーーー(>_<)
Posted by 森田忍になりたい航海士 at 2005年07月26日 22:38
>編集人さん

そうかー,平和ですねー。
じゃあひょっとして実物見たこと,ないですか??

「つづく」って,便利な言葉です。
書くのに疲れたら,
とりあえず「その瞬間! つづく」にしとけば,
大丈夫です(^^;)(ドラえもんでそんな話がありました(^^;))。


>森田忍になりたい航海士さん
そうです,Gです!(^^;)
『ハチクロ』読んでみたいなぁ……
「森田忍」ってのも,ハチクロのキャラなんでしょうか?
(せっかくのフリに真面目に返してしまって,すいません(^^;))
Posted by ガンジー at 2005年07月27日 08:17