■生命科学の現在・パート6(3)坂野仁さん
「生命科学の現在・パート6」第3回,今回の講師は,東京大学理学部生物化学教授,坂野仁さん。
最初話し始めた時は「ん?眠くなりそうなおっちゃんが来たか?」と思ったが,
いやいや,とんでもない!話すにつれてどんどんヒートアップして,非常にExcitingなお話だった。
今回も楽しかった!!
●アメリカでの研究の話
最初はアメリカでの研究のお話。
「免疫のことをはじめようと思ったけど,何度教科書を読んでも理解できない。
それでも研究をはじめた。教科書なんてわからなくても研究はできる」とか,
「免疫学を英語で講義するのに,自分は免疫学のことが分かっていないから
5冊教科書を買ってきて,毎回その最大公約数を集めてレジュメを作り,講義していた」などなど,
たのしいエピソードがいっぱいだった。
専門的な話の方は,免疫の抗体の遺伝子の再構築の話。
これは以前,
『精神と物質?分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか』(利根川進・立花隆,文春文庫)という本を読んだことがあったので,よくわかった。
あまりにその本とお話の内容が似ていたので訊いてみると,利根川さんとはお知り合いだそうである。
う〜んノーベル賞受賞者と知り合いだんなんて,ぼくなんかは単純だから「すごい!うらやましい」と思ってしまうのである(^^;)。
●日本へ来てから,現在の研究の話
後半は,日本に帰ってきてから,現在の研究の話。
アメリカでは免疫をやっていたが,
日本に帰ってきてからは「どうしても神経系がやりたい。新しいことにチャレンジしたい」ということで,
研究テーマを変えられて,現在は嗅覚の神経系の研究をされているそうである。
まず「研究テーマを変える」というそのセンスに脱帽。
40歳を過ぎてから自分の住み慣れたフィールドを捨てて,新しいことにチャレンジする,そのエネルギーとセンスはすばらしいと思った。
嗅覚系の話も,とてもおもしろかった。
坂野さんご自身もすごくうれしそうにお話しておられて,その顔がなんともいい感じであった。
いかにも自分の研究に夢中,という感じで,話し出したら止まらない感じ。
こういうのが一流の研究者の持つ雰囲気なのかなぁ,と思った。
●研究者というものは
研究の話の間にはさまれる,「研究者とは」といった話も印象的だった。
・東大の学生は優等生だから〈答えが決まっていないと気が済まない〉という奴が多いが,それではダメ。
自然はそう簡単に答えなんて与えてくれない。
・大事なのは,いいプロジェクトにとりくむこと。
そしてそのテーマに辛抱強く,執念深くかじりつくこと。
失敗にめげたりしていてはやっていけない。
・またそれと同じくらい大事なのは,いいサイエンティストのそばにつくこと。
よい研究をするには,よい研究をしている人を見て盗むのがやはりいちばん。
などなど,いい話が聞けたと思う。
●一緒にお食事♪
講義終了後は,根津駅前のラーメン屋でラーメンをすすりながら第2ラウンド。
ぼくはすばやく坂野さんの隣の席を確保して(^^;),たっぷり聞き耳をたてさせてもらった。
「研究者になるなら,やはり一度はアメリカに行った方がいい。カルチャーが日本と全然違うから」など,
ここでもいろいろと興味深いお話を聞かせていただいた。
う〜ん確かに留学には憧れるところあれども,自分の病気のことを考えると逡巡してしまう。
でもやっぱり将来いつか,一度は行ってみたいなぁ,アメリカの大学。
そんなわけで,
以上,今回もたのしかった!!
【参考】
東京大学理学系研究科・生物化学専攻坂野研究室
東京大学研究者データベース:坂野仁