自意識の果てなき暴走は続く。
もういまさら失うものは、何もない。
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「なに、嫌いなものを好きになるなんて、かんたんなことさ。
自分がそいつに与えてる意味付けを変えればいいんだ」
「かんたんと言っても難しくて、
わしが今まで本当に成功したことは、数えるほどしかないがね」
「理屈はかんたんでも実行するのは難しいことは、世の中にはたくさんある、
ってことですね」
「ま、そういうことだな。
でも、君なら挑戦してみる価値はあると思うよ。
変〈える〉ことはできなくても、変〈わる〉ことはあるしね」
そう言ってニッコリと笑うと、
おじいさんは跡形もなく消えてしまった。