■COEテーマ講義「心とことば」(8)大堀壽夫さん
月曜日はCOEテーマ講義の第8回,
東京大学 総合文化研究科 言語情報科学専攻の,大堀壽夫(としお)さんのお話でした。
「世界の言語に普遍文法/普遍概念はあるか?」というテーマで講義していただきました。
さすが言語学者らしく?とても論理的な話し方で,内容もなかなかおもしろかったです。
以下,内容報告です。
●普遍概念の候補1「空間概念」
・上下,内外,左右,などの概念は普遍的か?
→「左右」の概念を持たない言語もある。
そういう言語では,「東西南北」などの絶対的な概念を使って表す。
・ON/INの概念
→言語によって概念の範囲が異なる。
たとえばアメリカの「帽子をかぶる」「おもちゃを箱に入れる」は共に「put in」だが,
韓国語では「帽子をかぶる」は「〜(忘れた^^;)」。「箱に入れる」は「ー」。
∴〈普遍的な空間概念が存在し,それが全ての言語で均一な表現となる〉というわけではない。
候補1,棄却。
●普遍概念の候補2「主語と動作主」
・能格性(ergativity):対格型言語と能格型言語
対格型言語(例:英語):The man speared the kangaroo and (??) returned.
→(??)は「the man」(=他動詞の動作主)
能格型言語(例:Dyirbal語):その 男 その カンガルー 槍で射た,(??) 戻った。
→(??)は「カンガルー」(=他動詞の被動者)
これは我々の感覚からするとおかしいが,能格型言語はアフリカなどではごく普通に見られる。
∴〈普遍的な「主語」が存在し,それが全ての言語で均一な表現となる〉わけではない。
候補2も棄却。
●The mapping problm(写像問題)
「言葉は心の鏡」である。しかしその「映し方」は唯一絶対ではない。
「映し方」には様々ある。
(これはたとえば色彩に関してもそうである。
虹はある人間には7色に見え,別の人には6色に見える)
●普遍概念の候補3「論理接続語」
「and」や「or」は普遍概念か?ヒトの言語に一様な形で写像されるか?
→必ずしもそうではない。
・名詞句の連結
and型言語:John and Bill went to school. 「John went to school with Bill.」はダメ。
with言語:ジョンが学校へビルと行った。(John went to school with Bill.)
・動詞句の連結
and型言語:John drank beer "and" Bill drank sake.
ing型言語:ジョンはビールを飲ん“で”,ビルは日本酒を飲んだ。
∴〈論理接続が全ての言語で均一な表現となる〉わけではない。
候補3も棄却。
●結論と提案(丸写し。よくわからないところもある^^;)
(1)普遍文法/普遍概念は存在するかもしれない。
しかし,従来のアプローチでは不十分だ。
(2)多様な言語データをもとに,ボトムアップで「写像の問題」に取り組むことが必要だ。
そこでの一般的な法則性の発見が,ヒトの「認識のマップ」への手がかりとなるだろう。
さらに,
(3)このようなアプローチは,
「言語を含む認知発達が,先天的・生得的な要因と,後天的・学習的な要因の相互作用によって成り立つ」
という考えと親和性が高い。
つまり,
(4)生まれつき赤ちゃんが脳内に持っている「普遍文法」に,
限定的な「スイッチの設定」をしてやるだけで,個別の文法が出来上がる,
というシナリオにはムリがありそうだ。
(5)ヒトの本質を考えるには,言語文化を不可欠の環境(eco-system)と考えて,
その中での認知図式の発達を理解することが重要だ。
う〜ん書き写してみても最後の方は意味がよくわかりません(^^;)。
所詮1時間ちょっとの講義,全てを理解するのは,そりゃまぁ無理があるでしょう,
という言葉でお茶を濁して,このへんで。
途中はおもしろかったんだけどなぁ…(^^;)。
【参考ホームページ】
・
東京大学大学院 総合文化研究科 言語情報科学専攻
・
東京大学研究者データベース:大堀 壽夫
【他の回の記事はこちらから↓】
http://blog.livedoor.jp/gandhi/archives/cat_48505.html